完熟堆肥づくりで変わる、子どもたちの“命の見え方”
横浜ジュニアビレッジ根っこ塾では、毎年12月から完熟堆肥づくりに取り組んでいます。
この活動は、単なる農作業ではなく、自然と人のくらしのつながりを体感し、
「自分のものさし」の土台を育てる、根っこ塾ならではの重要なプログラムのひとつです。
仕込む量は1トン!!

緑区の乗馬場の馬糞、養鶏農家さんの鶏糞、寺家の米づくりで出たもみがらや米ぬか、
近くの公園に落ちている落ち葉、そして土と水。
これらを、農家さんから直伝で教わった方法で混ぜ合わせ、じっくりと発酵させていきます。
この堆肥づくりも、今年で4年目となりました。
12月から仕込みをはじめ、できあがるまでに1トンもある、堆肥を6回くらい切り返していきます。
切り返すとは、微生物の発酵をうながすため、一度袋にいれた堆肥を全部だして、水を加えてまた堆肥袋に戻す作業です。
これがめちゃめちゃ重労働!!

「くさい」「無理」から始まる体験
活動の最初、子どもたちは決まってこう言います。
「くさい」「無理」「やりたくない」
特に、仕込んでから最初の「切り返し」は大変です。
発酵が一気に進み、堆肥の温度は65度から70度以上に上昇。

馬糞や鶏糞のにおいも強く、髪や服にもにおいがつくほどです。
しかし、この工程こそが、子どもたちにとって大きな学びの入り口になります。

見えない世界に気づく瞬間
切り返しの際、堆肥の中には白い糸状菌が一面に広がります。
微生物や菌が栄養を分解し、発酵が進んでいる証です。

その様子を前に、子どもたちは次第に言葉を失い、じっと観察します。
「なんか、生きてる」
目には見えない存在が確かに働いていることを、体感として理解する瞬間です。

言葉が変わり、見え方が変わる
活動の中で、子どもたちには必ず「菌」の話をします。
微生物や菌が、死骸や排せつ物を分解し、土をつくり、
その土があるからこそ、私たちは食べ物を得て生きていること。
すると、子どもたちの言葉が変わっていきます。
「くさい」から「すごい」へ。
「ムリ〜!!!」から「菌が働いてる!!」へ。
知識として理解するのではなく、体験を通して実感することで、
世界の見え方そのものが変わっていきます。

命を“つながり”として捉えるようになる
活動前は、畑に虫がいれば「殺せばいいじゃん」と言っていた子どもたちもいます。
しかし、堆肥づくりを経験する中で、
そうした言葉や行動が少しずつ変わっていきます。
虫にすぐ手を出さなくなる。
落ち葉を見て「ここにも菌がいるんだよね」と話す。
命を点ではなく、つながりとして捉える視点が育っていきます。
「菌ちゃん、がんばってね」と言える子どもたち
毎年、この堆肥の切り返し作業には、根っこ塾の子どもたちだけではなく、
はじめて探究コースの低学年の子どもたち、近くの保育園の年中さんや年長さんも参加します。
昨年、はじめて堆肥づくりを経験した年中の子どもたち。
今年は年長になり、活動の中でこんな言葉が自然と出てきました。
「あ、葉っぱ!みて!ここにも菌ちゃんいるね」「菌ちゃん、がんばってね」
においに対する抵抗もなくなり、自ら進んで切り返し作業に取り組む姿が見られます。
この変化は、単なる慣れではなく、
命に対する捉え方の変化そのものです。

堆肥づくりが育てているもの
根っこ塾の堆肥づくりは、土をつくる活動であると同時に、
子どもたちの内面にある大切な感覚を育てています。
・見えない存在を想像する力
・小さな命を大切にする感覚
・自分が自然の循環の中で生きているという実感
これらはテストでは測れませんが、これからの時代を生きる上で欠かせない力です。
堆肥づくりは、地味で手間のかかる活動です。
しかし、その中には、子どもたちの世界の見え方を大きく変える力があります。
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